働いて1ヶ月、言うなれば1.0

働いていないのに口に出すのもどうかと思っていままで黙っていたのだが、仕事ってそれほど大変じゃないよ。仕事が大変だ、大変だという人がいるけど、あれはほとんど嘘だろうと。とりあえず暇そうにしている学生がむかつくから言ってた、みたいなところもあるんじゃないか。

学問の世界なんかと違ってこっちに求められるものがそれほど高くないから、達成感も簡単に感じられてすごく楽。というか、世の中の仕事が本当に優秀な人にしかできないものばっかりだったら、大半の人働けないしね。

確かに学生時代に比べて自分の時間はない。それでも、お金で時間を節約できることだって多いし、自分のお金を自由に使えると気分がいい。いろんな年齢の人と話せるのも楽しいなあ。そんなわけで働くってそれほど悪いことじゃないなーって思ってる。

あとはまあ働いてる会社によるんだろうけど、おれの場合、あまり大したことをしていなくても周りが評価してくれるので、仕事って楽だなーと思う。飲み込みが早いとか、資料がわかりやすいとか結構くだらないことで驚いてもらえる。 

ただ、ネットコンテンツっていうの・・・かな? おれが働いてる業界でビジネスを成り立たせるのは本当に大変だなーと思う。それはもうすべてのコンテンツが基本タダだから。儲からないし、収益のほとんどを広告に依存していてそれが入らなければ一発でアウト。

そのせいで社内で編集者の立場がどうしても弱くなってしまう。出版業界の場合、とにかく編集者が売れる本を作っていれば文句を言われないんだろうけど、ウェブの場合、編集者がいくらいいものを作っても、それが直接の利益にはならない。結局は営業の人がそれを利用して広告を取ってこないといけない。だって、タダなんだもん。

だから、ネットでは自由な言論が〜という話はよくあるけど、それはもちろん利益を度外視した限りでの話。その等価を得たいと考え始めた途端、広告主の顔色をうかかがわなきゃいけなくなって「ジャーナリズムの中立性」みたいなものは成り立たなくなっちゃう。とはいっても、新聞にしたって広告を取ってきて販売するという形態は明治以来変わっていないわけで、ジャーナリズムに商業倫理以上のものがあると考えるほうがおかしいと思うんだけどさ。

じゃあ有料化すればいいじゃん? てことで話が済めばいいのだが、そう簡単にいかないのがウェブビジネスの難しいところ。小学館が一昨年の6月に有料のネットマガジンを一挙に7誌創刊したけど、あまりに人が集まらないせいで昨年の9月末に閉鎖してしまった。ウェブ上の有料化のハードルはかなり高い。

これは「ソフトバンクの功罪」というやつで、確かにブロードバンドが多くの人の手に渡らせることになったんだが、それと同時にウェブは安い! っていうかタダじゃん! という感覚を彼らに植え付けてしまった。そのせいでいまだにロクな収益方法も見つからず、ウェブ業界の首を真綿で締めつけるようなことになってる。実際、有料コンテンツで成り立ってるのってエロサイトぐらいじゃないんだろうか?

だから今のところは広告で頑張って利益を上げていくしかないんだ、と話はふり出しに戻る。そこでどうやって広告の価値をさらに高めることができるのかということを一社員が考えてみると――PVはもちろんだけどそれ以上に――お金を持っていて社会的地位の高い「リッチ層」をユーザーとして取り込むしかない。

でも、ウェブの読者――特にハードユーザー――ってカネ持ってない暇人の集まりなんだよねえ。2ちゃん上の書き込みで捕まるのも大抵はほとんどニートみたいやつらばっかの一方で、大企業の部長さんの情報源は、ネットよりも、日経ビジネス週刊東洋経済だったりするわけでしょう。

ウェブの時代だとかなんとか言ったって、ネット上のコンテンツと差別化できている高級メディアがなくなることは当分ない。そうしてウェブ2.0みたいなバズワードもお寒くなってきた昨今、モバゲータウンmixiなんかに広告出そうとする会社もどんどん減っていくんじゃないですかね。だってロクにカネ持ってないガキしか使ってないんだぜ? 

そういうわけで、有料紙に負けないコンテンツをとにかく作って、もっとリッチ層をネット上に呼び込んでいくっていうのが、とりあえずおれのやることかなあと思うことしきり。

言うなれば、ウェブ2.0とか言われていたもろもろを現実の1.0に引っ張っていきましょうぜ、ってことなのではないかと。